福助菊の逞しさ

2021.08.21

福助菊の丈は7~10㎝に伸びて、すくすく育っています。菊の中でも草丈が低く,大輪の花を咲かせる福助菊。

福助菊の姿はどのように生み出されたのでしょうか?

遡ること、時代は江戸。菊の栽培が一般庶民の間でも広がっていました。大菊の花径18㎝以上を競う「菊合わせ」言う展覧会があり、菊愛好家達が交配に熱中していました。何せ、入賞すれば3両(現在価格1両≒30~40万円)の賞金がもらえ、菊の栽培名人と称され名誉も与えられたそうです。その様な菊愛好家達のおかげで次々と大輪の花を咲かせる美しい菊の品種が誕生していきました。

そしてある日のこと。

ひとりの商人が、お寺に仏花を供えようと、たくさんの菊を持って行きました。和尚様は「有難い有難い」とその菊を受け取られました。お寺の門を出た商人が振り返り合掌をしようとした時、見送りについてこられていた和尚様が、こんな話をされました。

「お寺のお堂にある仏壇に菊をお供えると、菊の丈が長すぎて花挿しに挿しにくい。短い菊があれば良いが花が小菊じゃ。菊の花は大きい方が見映え良く、丈がもう少し短いと仏花に重宝するのじゃがな・・・」と言われました。

それを聞いた商人は、『これは良い話を聞いた』と思い深々と頭を下げ合掌をし、お寺を後にしました。商人は色々な和菊の大菊を用いて品種改良を重ね、肥料のやり方、時期など様々な試行錯誤ののち、福助の様な頭が大きく背丈が低い姿の菊を育てることができました。

商人が思った通り、お寺や武家屋敷などから福助菊や大菊の三本仕立などの注文がたくさん入るようになりました。

大菊品種を大菊のまま売るのではなく、草丈を低く抑えたことで、より大菊の花の存在が顕著となり、育てる場所や置く場所の選択肢も広がりました。

菊の栽培方法・仕立て方も工夫され、菊の楽しみ方もたくさん生み出されて行きました。

お寺の和尚様の呟きに商機を見出した商人さんのおかげで、多くの人々に愛される福助菊が誕生したのです。

 

2021/08/21

草丈が7~10㎝に伸びている福助菊。

堤町で福助菊のお世話されているボランティアの方が、如雨露(じょうろ)で一鉢一鉢、丁寧に成長具合を見ながら、お水をあげておられました。

2021/09/10 福助菊は土の上から10~15㎝に成長してきました。葉の色・厚みもとても良い状態です。

この日は福助菊栽培スケジュールに添って、肥料調整剤QUEENを散布しました。

肥料調整剤は、チッソや残肥を素早く抜き去り、花の腐れ防止や花姿の乱れを予防して大輪の美しい花を咲かせる為に使われます。

肥料調整剤QUEENと液体肥料(大菊PK+ウルトラキング)は5日ごとに交互で水やり代わりに撒いておられます。

大変そうですが、福助菊は見事に応えてくれ、大輪の花を付けてくれると思います。

大菊を福助菊とするために菊専用乾燥肥料ペレット(ビタミン・アミノ酸豊富な固形肥料)を8月末まで2週間に1回小さじ2~3杯を鉢のふちに置き肥し、液体肥料のウルトラキング(根腐れ防止・活力剤)と大菊液肥(リンが多く巨大で美しい花を咲かせる花肥)キャップ1杯づつ入れ1000倍に薄めた液体肥料を9月中旬までに週に2~3回散布します。

たくさんの栄養をもらった福助菊は、「よし!大きく育つぞ!」と思いきやビーナイン(成長抑制剤)を8月中、10日おきに計3回散布されます。

「たくさん食べていいよ~」と喜んで栄養を吸収していると、こんどは「大きくなり過ぎてはいけません!」と10日ごとに言われる様な感じです。もし菊が話せたら、「え~これから茎が伸びるのに、どうなるの?」と困ってしまうのではないかと心配になりますが、江戸時代から大輪の花を咲かせる和菊を様々な肥料配合と成長抑制剤を適量・回数を守り、9月10日以降肥料調整剤を使用することで余分な肥料を抜き、可愛らしい福助菊となります。

江戸時代には、肥料として牛糞・鳥骨・油かすや米ぬか等が使われていたようですが、ビーナインの様な成長抑制剤が発売されたのは昭和35年です。それまで菊愛好家の人達は何を矮化剤(植物の成長抑制薬剤の総称)の代わりに使っていたのでしょうか?

福助菊の苗を持って来て下さった菊の講師、山下さんにお話を伺いました。

「菊の花の開花は日照時間が短くなると(日照時間10時間以下)蕾を付け開花の準備を始めます。ですから、大菊の茎が伸びる期間を短くしていたと思います。成長時期を今より遅くずらしていたんでしょうね。8月頃に植え替えするとあまり育たない内に花芽がつきますから。また、そんなに成功してなかった方法としては、伸びてきた茎に、もめん針を茎に対し垂直方向に1本づつ3~5本程挿す方法もあったそうですけどね」と答えてくださいました。

凄い!凄すぎます!思わず目がパチパチしてしまいました。

これは考えるに、茎の繊維を傷つける事で茎の成長ホルモンを阻害しようとしたのかな?と思われます。また7月下旬に植え替えし育てた場合、草丈が30㎝以上になると、日照時間を短くする為、暗い所に大菊を移動させ花芽が早く付くようにしていたようです。

福助菊を育てようとした菊愛好家の人達の苦労や努力・工夫に驚き感心しました。

今も福助菊の美しく可愛らしい姿を見れるのは福助菊が数々の試練を乗り越えてくれたおかげだなぁと福助菊の逞しさを感じました。

 

2021.09.15

福助菊は30㎝程に育っています。草丈が伸びてくると支柱が取り付けられます。支柱は茎が斜めに伸びたり曲がったりしないよう、茎を真っ直ぐに成長させる為の支柱ですが、福助菊の場合、花が大きくなるので支柱は必要なものとなります。

福助の花は5号鉢(15㎝)よりも花径が大きく、ほぼ20㎝以上が理想とされています。茎に対して花が少し重いようです。茎は大きな花を支える為に支柱の力が必要なのです。上の写真ではまだ花台を付けていませんが、蕾がつくころには花台を取り付ける棒としての役割も担っているのですね。

福助菊の成長は早く、たくさんの作業がありますが見るたびに成長している様子がわかります。

小柄ながらも花が開花すると、そのボリュームと艶やかさに圧倒されそうです。

福助菊は菊にとって少々負担のある育て方かもしれませんが、江戸時代からの歴史を考えると、やはりバラなどと同じ様に野生原種から数々の改良に耐え進化し続ける対応力と生命力があったのだろうと思います。

キク科は双子葉植物の中で1番種類が多く世界中で栽培されており、世界で約950属2万種、日本国内では約70属360種存在しているそうです。

ひまわり、コスモス、ダリア、カモミール、アザミ、ゴボウ、アーティチョーク等もキク科です。

ちなみに2位はバラ科。3位はラン科です。

植物の分類を調べると、あの花が?あの野菜が?と以外な発見がありそうですね。